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うちにいるSNS依存の女子高生が、この映画のテーマ曲をガンガン鳴らしていたため、映画が気になり、
神戸ミントにて鑑賞。

就活がテーマで、男女数人の青春群像・・かというと、そのような爽やかなものでは勿論ない。
今時の若者の「今」の気分を切り取った、それでもやはり、ある季節から次の季節への移ろいを描いた青春もの。
主人公に大学の演劇サークルで脚本を書いていた拓人(佐藤健)。
ルームメイトに天真爛漫なバンド青年光太郎。
キャリア志向で少し頭でっかちの理香に二階堂ふみ。
拓人がずっと前から片想いをしている瑞月(有村架純)

この拓人が、とにかくいっぺんも笑わない。笑えないのでしょう。
それもそのはず、彼は、就職浪人して、就活をこじらせています。内定が出ないところへ、就活一年目の同居人が内定をもらう。
そして、密かに思っている瑞月も、内定を・・。
こうなってくれば、心の中はブラックになって当然です。

私の時代も、友達の誰それがどこの内定をとった、という噂は聞こえてきたけど、今はSNS時代。
これは、つらいだろうなあ・・。他人のああしたこうしたという動きが常に手元に随時入ってくる。

高校生の娘を見ていても思うが、では、ツイッターなど見ないで、我が道を行けばいいんじゃないの?というのはナンセンス。
今の若者にとって、SNSでの自己というのは、もう一人のリアルな自分というくらい、そこにアイデンティティがあります。そこでのリア充度を競い合う、いや競い合わさせるはめになるのです。

少々驚いたのは、里香の同棲相手の宮本のキャラ。
広告とか、アート志向の若者で、サラリーマンを見下した上から目線。クリエイティブなことをする、というのが彼らにとっての、「カッコいい」仕事であるわけですが、この手の風潮って、私が学生だったバブルの頃には主流でしたが、未だにこのような、浮ついた若者っているのか~。
平成生まれって、もっともっと堅実志向な気がしました。

拓人には、一緒に演劇をしていたが、途中で道分かれてしまった友人がおり、彼のことが気になって仕方がありません。
その友人が独立して劇団を主宰し、毎日活動的に生きているわけですが、それがしゃくに触ってしかたがない拓人。
そりゃそうです。自分だって、そうしたかったし、そうしていたかもしれない自分。それがその友人なんですからね。
当の自分は、演劇を諦めて就活しているのに、内定がもらえず、ずっと、足踏み状態。

ラストでどんでん返し・・といった風な展開で、ツイッターの別アカウントで、拓人が、どのシーンでも毒を吐いていた・・というネタあかしがありますが、これには驚きませんでした。
それが就活であれ、婚活であれ、妊活であれ、先を越された時の人の心境は腐ってしまって、素直におめでとうなんて言えないものでしょう。(妊活なんて、それこそ、先を越された女性の心境は大変なものだと聞くし)

それが、昔は、こっそりと日記に吐き出して、誰にも見られずにすんだものを、今の時代、ネットにつながっている・・という。それだけの違い。

拓人、がんばれ。
いつか、そういう踊り場での日々も、自分の糧になる。
そういう若者に出会った時、自分の子供が、同じように腐ってる時に、理解してあげれるから。
少し人生の先輩の私は彼にそう言ってあげたい気持ちになりました。

もっているツールは、どんどんパワフルになっても、そんなに人の心は変わらない。
私たちの人生には、節目節目で、一枚の紙が差し出され、それを記入して、前へ進んでいく。
それでも、内定をとった光太郎が、タクシーの中でつぶやきます。
「内定もらったら、自分が全肯定されたような気がする。それでも、何者かになれた気がしないだよな」

それはそうでしょう。やっとスタートラインを確保しただけですから。
ここからの実人生は、思っているより、ずっとずっと長い。
SNSなんぞに支配されずに、若者には本当にがんばって生きていって欲しい。
ラストシーン、エンドロールの間、ずっとそう思いながらこの映画の余韻を味わっていました。
映画としては、楽しい映画でもないし、めちゃくちゃ面白い、っていうものでもない。
でも、自分の娘にも、その友人たちにも、是非見て欲しい映画だと思います。

それにしても、私も最近、プチ就活しましたが、落ちても「あ、年だしね。おばちゃんいらんよね」
と、傷もつきません。年とるってすごいことだわ・・(笑)